2019/10/19

まこもたけ

台風の一日、いろいろなことを考えさせられました。
日々生活できて店にお客様をお迎えできることは、けしてあたりまえなことではなく、生活させてもらっていることなのだと。大きな災害が年々重なり、農家さんのご苦労とご負担も増えていくばかりの中で、
それに乗っかって生活するのではなく、なにか意識を変えていかなければいけないと、痛感しました。
地球温暖化につながることをやめるいちばん身近なできることとしては、まずは、プラスチックゴミを出さないようにする、ということでしょうか。「プラスチック・フリー生活」の本を読み直して勉強し、
日々できることを増やしていかなければと思っています。


まこもたけが旬を迎えています。

まこもは、真菰と書きます。
その葉は大きいものでは2メートルにも育ち、出雲大社の本殿にあるしめ縄に古くから伝統的に使われ、毎年6月1日にはまこも祭り(正式には涼殿際)と呼ばれる神事が行われるそうです。
まさにそのしめ縄のために奉納されているまこもの株を受け継いで育てている、敬愛する鳥取の農園から、無農薬無化学肥料で手塩にかけて育てられた「まこもたけ」が採れたての輝きで届きました。
まこもたけは、花芽につく黒穂菌の作用で根元が肥大したものです。その肥大したところをいただきます。さっそく、皮をむかずにかるく塩をして蒸してみました。

ほどよく蒸されると、皮も指でかんたんにはがせて、実をかるく押せばやわらかな繊維にそってばらすようにほぐすことができます。まことに包丁いらず。
その味わいは、たけのことアスパラとヤングコーンを足したような、淡いのに沁み入るほのかな甘さと
やわらかな繊維のポクポク感、わ、美味しい、、、!と身体が反応して小さな声が出てしまいました。
オリーブオイルとも、落花生オイルとも、じんわり美味しい。
ということは、各国の料理に合うことでしょう。
以前に入手したときには、お客様用にトリュフと合わせてみたらとてもいいとりあわせでしたが、そんなたいそうなものをあわせなくても、まこもたけの滋味をひきたてるように、マッシュルームを細かく叩き酒蒸しにしたものとサラサラのじゃがいものピュレと合わせ、パルミジャーノチーズを仕上げに加えて、温かいズッパ(イタリア流の汁気の少ないスープ)に。この時期おすすめのメニューのひとつです。
赤ワインとゆっくり召し上がっていただけたら嬉しいです。
パルミジャーノチーズとなにがしかのオイルと合わせるだけでも、前菜として最高の一皿。こちらは白ワインにもぴったり。

このまこもたけ、とても栄養価が高くビタミンなども豊富なので、ここ数年日本各地で栽培が広まっているようです。
もともと日本で群生していたまこもは黒補菌がつかず根元が肥大しない種で、
現在広まっているまこもたけができる種は、古くから日常的に食されている東南アジアから入れられたのだとか。
まこもの葉はそのままでは食べられないので市場に出回りませんが、優れた浄化作用があり人間の五臓の機能を高めるとされ、お茶としての製品化はもとより、
医療分野の漢方、薬膳などにも取り入れられています。
そもそも、身体を浄化することがわかる以前から、土地を浄化する力がつよく水脈を繋いでくれる縁起ものとして重宝されてきたようです。
アメリカの先住民は、近縁種のまこもの種(ワイルドライス)を食べる習慣があります。
国境を伝播し時代を越えて古代を感じることのできるまこもたけ。
身体の中に美味しさ以上のなにかが広がります。